税理士事務所のAI活用 資料

税理士業務のおすすめフォルダ構成と、
wikiの仕組み

AIに整理を任せるための、フォルダの形と考え方です。
2026年11月 合同会社サモテク 保母 真吾

ルールと記録を、AIの中ではなく、事務所のフォルダに置く。この考え方を、税理士業務の1年の流れに当てはめて形にしました。前半はフォルダの構成、後半はその土台になっているwikiの仕組みです。

顧客名・アドレスなどの例は、すべて架空のものです。年度や書類の分け方で、今の事務所の決まりがあるところは、そちらを優先してください。

前半 税理士業務のおすすめフォルダ構成

置き場は3つ。顧客台帳1枚と、顧客コードでつなぎます。

01

全体像:3つの置き場を、顧客コードでつなぐ

原本・記録とルール・記帳を、それぞれ向いている場所に置きます。どこにあっても、頭に同じ顧客コード(A001など)が付いているので、AIもGASも迷いません。

顧客台帳(スプレッドシート) 正はここ1つ。すべての起点

台帳を見て、GASが振り分け

Googleドライブ

原本の置き場。通帳・請求書・決算書・申告書などのPDF。AIは使いません。

振り分けに要る列だけ写す

Obsidianの保管庫

文字の記録とルールの置き場。対応履歴・宿題・科目ルール・チェックリスト。

顧客コードでルールを探す

記帳ツール

お使いのもの。科目ルールを読み、直した内容を書き足す2か所だけ足します。

決めること 1台帳はスプレッドシート1つ。保管庫には、メモの振り分けに要る列だけを写します
決めること 2原本(PDF・申告書)はドライブ。文字の記録とルールは保管庫
決めること 3顧客データが入るフォルダと、入らないフォルダを分けます
02

顧客台帳:すべての起点

列は、どこで使うかで決めます。写すの付いた列だけを保管庫の顧客台帳.md に写し、アドレスなどの連絡先はスプレッドシートから出しません。

列例使うところ
顧客コード写すA001すべて。フォルダ名・ページ名の頭にも付けます
顧客名写す株式会社さくら商事ドライブのフォルダ名・顧客ページ
呼び名写すさくら商事、さくらさんメモの振り分け。メモには正式名で書かれないためです
区分・決算月写す法人・3月/個人・12月年度フォルダの切り方(期か暦年か)と、点検で「今月・来月が決算の顧客」を出すとき
メールアドレス・ドメインinfo@sakura.example添付の振り分け(GAS)
キーワードさくら件名・ファイル名での振り分け(GAS)
フォルダドライブのフォルダのURL振り分けの入れ先(GAS)

顧客コードは一度付けたら変えず、契約が終わっても使い回しません。過去の記録とフォルダが、ずっと同じコードでたどれます。

03

Googleドライブ:原本の置き場

顧客ごとに「受け取る場所」「年度をまたぐもの」「年度ごと」の3つに分けます。法人は決算期ごと、個人は暦年ごとです。

GOOGLEドライブ

  • 顧問先/
    • 00_未振り分け/GASが決めきれなかったものだけ。推測では入れない
    • A001_株式会社さくら商事/
      • 00_受信/GASが入れるのはここだけ
      • 01_契約・届出/顧問契約・委任状・届出の控えなど、年度をまたぐもの
      • 2026年3月期/法人は決算期ごと
        • 01_預かり資料/通帳・請求書・領収書
        • 02_記帳/仕訳のCSV・元帳・試算表
        • 03_決算・申告/決算書・内訳書・申告書・受信通知
        • 04_給与・年末調整/受けている顧客だけ
      • 2025年3月期/
    • A003_あおばデザイン(青葉 陽子)/
      • 00_受信/
      • 01_契約・届出/
      • 2026年分/個人は暦年ごと(中の分け方は法人と同じ)
    • 管理/
      • 顧客台帳スプレッドシート(正)
      • 振り分けログどれを、なぜそこへ入れたか
GASの入れ先は「00_受信」1か所に固定そこから先の分け方を変えても、GASを直さずに済みます。年度フォルダへ移すのは、中身を確かめてからです。
年度フォルダは、空の形を1つ作って複製01〜04の空のフォルダを「ひな形」として置いておき、新しい期が来たら複製します。どの顧客も同じ形になるので、AIにも探させやすくなります。
番号を頭に付けて、並び順を固定00・01…と付けておくと、どの顧客を開いても同じ順に並びます。
ファイル名の決まりは、今の決まりを優先「日付_顧客コード_書類名」のようにそろえると探しやすくなります。電子帳簿保存法への対応などで決まりがあれば、そちらに合わせてください。
04

Obsidianの保管庫:記録とルールの置き場

記録とルールは、Obsidianの保管庫(中身はただのフォルダ)に置きます。税理士業務では、期ごとに先生が決めたことを残す「決算・申告メモ」と、顧客名を書かない「事務所の知識」が効きます。

OBSIDIANの保管庫

  • 顧問先ノート/
    • CLAUDE.mdなし保管庫のルール。AIが最初に読む
    • 顧客台帳.md写し(顧客コード・顧客名・呼び名・区分・決算月)
    • 00_受信箱/あり面談・電話・Meetのメモを放り込むだけ
    • 処理済み/あり整理が終わったメモ。原文はここに残す
    • 顧客/あり
      • A001_さくら商事/
        • 顧客ページ.md基本情報・対応履歴・宿題
        • 科目ルール.md科目・補助科目と、その変更履歴
        • 決算・申告メモ.md期ごとの論点と、先生が決めたこと
    • 共通/なしどのAIにも、そのまま渡せる
      • チェックリスト/申告前(法人・個人)・消費税・年末調整
      • 業務の手順/月次・決算・年末調整・確定申告の流れ
      • AIへの共通メモ.md各AIから書き出した記憶・好み
      • よく使う頼み方.md
    • 事務所の知識/なし改正・通達・研修のメモを論点ごとに。出典つき
    • 要確認.md ・ log.md
    • .claude/なし
      • skills/受信箱の整理・点検など
      • settings.json読ませないフォルダの設定
あり顧客データが入る(AIに渡すときは9章の4段目) なし顧客データが入らない(どのAIにも渡せる)
科目ルールは、顧客ページと別のファイルに記帳のときにルールだけをAIに渡せるので、渡すデータが減ります。直した内容は古い行を消さずに変更履歴へ残します。
決算・申告メモは「前期はどう判断した?」のために期ごとの論点と、先生が決めたことを残します。AIが書くのは、先生が決めたことだけです。判断そのものは書かせません。
事務所の知識には、顧客名を書かない論点ごとのページに、出典(国税庁のページなど)を必ず付けます。顧客データが入らないので、どのAIにも渡せます。
業務の手順は、スキルの元になるうまく回った手順をここに書き、繰り返すものはスキルにします。
05

1年の流れに当てはめると

どの時期も「原本はドライブ、記録とルールは保管庫」の分け方は同じです。AIに頼むのは、整理と、抜けの洗い出しまでです。

時期・業務原本(ドライブ)記録とルール(保管庫)AIに頼むこと(例)
毎月:資料の受け取り・記帳00_受信 → 01_預かり資料・02_記帳科目ルール.md を読み、直したら書き足す科目ルールを読んでから、この通帳を仕訳して
面談・電話のあと—メモを00_受信箱へ → 顧客ページの対応履歴・宿題受信箱を整理して
決算・申告03_決算・申告申告前のチェックリスト → 決算・申告メモチェックリストを当てて、引っかかった所を一覧に
年末調整(12〜1月)04_給与・年末調整年末調整のチェックリスト資料がそろっていない顧客を一覧に
確定申告(2〜3月)個人の「2026年分」個人の申告前チェックリスト・決算・申告メモ前年のメモと比べて、今年確かめることを出して
月に1回00_未振り分けを空にする要確認.md・止まっている宿題顧客ページを点検して

台帳に決算月を入れておくと、点検のときに「今月・来月が決算の顧客で、資料がそろっていないのは?」まで出せます。引っかかった所をどうするかは、先生が判断します。

後半 wikiの仕組み

前半のフォルダ構成は、私が毎日使っている仕組みを税理士業務に当てはめたものです。

06

wikiとは:探し直さず、育てる

考え方の元は、Andrej Karpathy さんが公開した「LLM Wiki」。資料を毎回AIに探させるのではなく、一度整理したページをAIが更新し続ける、という考え方です。

毎回、探し直す

聞くたびに資料をAIに渡して、その場で探させる。答えはその場限りで、次に聞くときはまた一から。資料が増えるほど、遅く不確かになります。

一度整理して、育てる

新しい資料が来るたびに、AIが関係するページを書き足す。目次とログがあるので、次はページを引くだけ。使うほど育ちます。

生の記録日報・メモ・切り抜き
AIは書き換えない
→取り込み
wikiAIが整理・更新
目次とログつき
↻ 月1回の点検
→使う
成果物提案書・報告・メールなど
1書くのは人、整理するのはAI

人は放り込むだけ。続かない原因になる「きれいに書く」をやめます。

2記憶は、自分のフォルダに置く

全部ただの文字のファイルなので、どのAIにも渡せて、そのままバックアップになります。

3生の記録は書き換えない

整理が間違っても、いつでも元から作り直せます。

07

私のwiki(2026年11月時点)

私が書いているのは日報だけです。整理はすべてAIが行っています。

262日分日報(生の記録)
141ページwiki(AIが整理したもの)
132件整理の記録(ログ)
25本スキル(決まった作業の手順)

私の保管庫(フォルダの形だけ)

  • 保管庫/
    • CLAUDE.md運用のルール。AIが最初に読む
    • 00_Inbox/生思いついたメモの一時置き場
    • 01_Daily/生日報・週報・月報
    • 03_Input/生Web記事・PDF・書き起こしの切り抜き
    • wiki/AIが整理・更新するところ
      • sources/9切り抜き1本ごとの要約
      • entities/40人・会社・サービスのページ
      • concepts/66考え方・原則のページ
      • synthesis/26いくつかをまとめた考察
      • index.md全ページの目次
      • log.mdいつ何を整理したか(追記だけ)
    • output/提案書・レポートなどの成果物
    • .agent/skills/決まった作業の手順
生生の記録。AIは読むだけで書き換えない
取り込み記事のURLや日報を渡すと、要約を1枚作り、関係する人・考え方のページを5〜15枚書き足します。目次とログも毎回更新します。
質問「〇〇の件、前はどう判断した?」と聞くと、目次から関係するページを引いて、どのページに書いてあったかを添えて答えます。良い答えは考察のページとして残します。
点検月に1回、リンク切れ・どこからもつながっていないページ・ページどうしの食い違い・古くなったページを探して、レポートにします。
08

先生の事務所に当てはめると

前半の保管庫は、このwikiの顧問先版です。置き場の役割は、そのまま対応します。

私のwiki先生の保管庫(顧問先ノート)
日報・切り抜き(生の記録)00_受信箱 → 処理済み(面談・電話・Meetのメモ)
人・会社のページ顧客/ の顧客ページ・科目ルール
考え方・原則のページ事務所の知識/(論点ごと・出典つき)
まとめた考察決算・申告メモ、育ったチェックリスト
目次(index.md)顧客台帳.md
ログ・ルール・スキルlog.md ・ CLAUDE.md ・ .claude/skills/

育ってくると、こんな聞き方ができます

「さくら商事の前期の決算で、決めたことは?」決算・申告メモを引いて、どの期のメモかを添えて答えます
「Amazonの購入を、顧客ごとにどの科目にしている?」各社の科目ルール.md を横に並べて答えます
「今月・来月が決算で、資料がそろっていない顧客は?」台帳の決算月と、顧客ページの宿題から出します
「この改正で、確かめた方がいい顧客の候補は?」事務所の知識と台帳から、候補を出典つきで挙げます

AIが出すのは、候補と、どこに書いてあったかまでです。税務の判断は先生がします。実際の顧客データでAIを使うときの考え方は、次の章にまとめました。

09

データの扱い:守秘義務と両立させる

データが外に出ない順に、4段階で考えます。上から順に検討し、下に行くほど慎重に扱います。

  1. AIを使わない仕組みで解決する台帳とGASの振り分けはここ。データはGmail・ドライブ・スプレッドシートの中だけで動きます
  2. Google Workspaceの中で完結させるすでにお使いの環境の中で、できることを先に使います
  3. 手元のパソコンの中で処理するObsidianのファイルは手元にあります。どこまで手元で済むかを先に考えます
  4. 外のAIに渡すときは、置き換えと確認をしてから顧客名を顧客コードに置き換えて渡します。お使いのプランと「入力を学習に使うか」の設定も、先に確認します

Claude Code も、整理するときは中身をAIの会社(Anthropic)に送って処理しています。保管庫の「あり」のフォルダを渡すときは、4段目として扱います。各AIの学習の設定はプランと時期で変わるので、使う前に確かめてください。

10

始める順番

どれも前のものの上に乗るので、この順だと手戻りがありません。全部をそろえてから始める必要はなく、1つずつで効き始めます。

  1. 顧客台帳を作る顧客コード・顧客名・呼び名・区分・決算月・アドレス・フォルダ
  2. メモの行き先を、受信箱1か所に決める面談・電話・Meetのメモは、整えずに放り込むだけ
  3. 1社分だけ、科目ルール表を作る記帳のときに読ませて、直したら書き足す。うまくいったら他の顧客へ
  4. 申告前のチェックリストを書き出す今、頭の中で見ている観点を箇条書きに
  5. 事務所の知識を、論点1つから次に調べた改正や通達を、出典つきで1ページにする